石井理修

陽子や中性子は、それぞれクォークという素粒子が3つずつ集まってできている。クォーク同士をつなぎとめている力がグルーオン。まるでグルー(糊)のようだということから名付けられた。 陽子や中性子がクォーク3つからできているのは、クォークが3つ集まると安定になるから。このことを、光の3原色(赤、青、緑)がそろうと無色(白色)になることになぞらえて、クォークが従う基本法則を「量子色力学(QCD:Quantum Chromodynamics)」と呼ぶ。QCDは強い相互作用に関連するすべての物理現象を記述する究極の理論として知られている。このQCDを用いると、クォークの性質から出発して、核子やπ中間子の性質を理論的に求めることができる。さらに進めれば、核子間に作用する核力も導き出せるのだ。 QCDは低エネルギー領域で相互作用がどんどん強くなる。このため、核力を始めとする低エネルギーの物理量を、連続空間上で直接計算する有効な方法は今でも知られていない。 陽子や中性子などの核子(左)と核力を求めるための格子QCDの概念図 核子は赤、青、緑の色荷をもつクォーク1個ずつからできている。核子間の核力を求めるには、核子が互いに力を及ぼしあうことのない十分な距離が取れるサイズの箱(空間)を用意し、それを格子に分割して計算する。核子の直径は、約1 fm(10-15m)。2つの核子間の核力を求めるには、一辺が10 fmの箱を用意して、それを0.1 fmの格子に分けて計算したいところ。しかし、これまではスパコンの性能の限界もあり、一辺3 fm程度の箱が最大であった。